人は警告や脅しでは変わらない!ポジティブ戦略の活用法

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「健康的な食事をしたい」「運動を続けたい」「節約したい」など、誰でも何かしらの行動を変えたいと思っているのではないでしょうか。しかし、行動を変えるのはなかなか難しいものです。

マーケティングやプロダクトデザインにおいても、ユーザーの行動を変えることは大きな課題です。

そこで、今回は、Tali Sharot氏のTEDxCambridgeでの講演「How to motivate yourself to change your behavior」を参考に、人々の行動を変えるための「ポジティブな戦略」についてご紹介します。

Tali Sharot氏は、イギリスの心理学者で、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの認知神経科学准教授を務めています。Tali Sharot氏は、人間の意思決定や楽観主義に関する研究で知られている心理学者であり、彼女の研究は世界中で注目されています。

How to motivate yourself to change your behavior | Tali Sharot | TEDxCambridge

このTEDトークでは以下の3点がポイントとして挙げられます。

  • 行動を変えるきっかけは「恐怖」ではなく「希望」
  • 行動を変えるには「進捗状況が見える」「比較できる」「ゲーム性がある」の3要素があると効果的
  • 人々の行動を変える4つの原則(社会的報酬、進み具合の見える化、すぐに得られる報酬、コントロール感)

それでは、それぞれのポイントについて、詳しく解説しています。

行動を変えるきっかけは「恐怖」ではなく「希望」

Tali Sharot氏によると、警告や脅迫よりも、ポジティブな戦略を用いることで、より効果的に人々の行動を変えることができると考えられます。

なぜ警告や脅迫は効果的でないのか

人は、恐怖や不安を感じると、行動を起こすよりも、凍りつくか逃げるという反応を示す傾向があります。そのため、警告や脅迫を用いて行動を変えさせようとしても、効果は限られると考えられます。

ポジティブな戦略とは

ポジティブな戦略とは、人々に希望や可能性を与え、行動を起こすように促す方法のことです。例えば、健康キャンペーンで、禁煙することで得られる健康上のメリットを強調したり、ダイエットアプリで、体重や体脂肪の減少を可視化したりすることで、人は行動を起こすようになります。

Tali Sharot氏は、行動を変えるためには、人々に「自分はできる」という自信を与えることが重要であると述べています。

マーケティングやプロダクトデザインへの活用

マーケティングやプロダクトデザインにおいても、ポジティブな戦略を活用することで、ユーザーの行動を変えて、より成功に近づくことができます。例えば、新しい製品を発売する際には、その製品を使用することで得られるメリットを強調したり、ユーザーの達成感や満足感を高めるような仕組みを設計したりすることで、ユーザーに製品を継続的に使用してもらえるようになります。


人々の行動を変えるには、ポジティブな情報を活用する

研究によると、人々はポジティブな情報に影響されやすい傾向があることがわかっています。また、人々の行動を変えるには、進捗状況が見える、比較できる、ゲーム性がある、という3つの要素を活用すると効果的であるとTali Sharot氏は述べています。

医療スタッフの実験

Tali Sharot氏らは、アメリカの病院で、医療スタッフが患者さんの部屋に入る前後にどれくらいの頻度で手を洗っているかを調査しました。カメラを設置して観察したところ、医療スタッフの10人に1人しか手を洗っていませんでした。

そこで、研究者は電子掲示板を設置して、医療スタッフの手洗いの遵守率を表示しました。手を洗うたびに数字が上がり、現在のシフトの遵守率と週全体の遵守率が表示されるようにしました。すると、遵守率は90%にまで上昇しました。

この研究結果は、人々がポジティブな情報に影響されやすいことを示唆しています。また、人々の行動を変えるには、進捗状況が見える、比較できる、ゲーム性がある、という3つの要素を活用すると効果的であると考えられます。

人の脳は、自分のことを良いように見てもらいたいと考えるため、ポジティブな情報をより受け入れやすい傾向があります。また、人は、自分の進捗状況が見える、他の人と比較することで自分のパフォーマンスを評価する、ゲームのような要素があるとやる気になる、という特性があると述べています。

これらの特性を活用することで、人々の行動を変えることにつながります。例えば、ダイエットをしたい人は、体重や体脂肪の減少を見える化することで、モチベーションを維持することができます。岡田斗司夫さんの「レコーディング・ダイエット」ですね。

また、スポーツの練習をしたい人は、他の人と競争することで、より高いパフォーマンスを目指すことができます。

人々の行動を変える4つの原則

Tali Sharot氏らの研究によると、人々の行動を変えるには、以下の4つの原則が効果的であると考えられます。

  1. 社会的報酬

人は社会的な生き物であり、他の人が何をしているかを気にする傾向があります。そのため、他の人がやっていることを強調することで、自分もその行動を取ろうとするという社会的インセンティブ(報酬)が働きます。

先程の実験例では、医療スタッフが他のスタッフの手洗いの遵守率を見ることで、自分の遵守率も向上したことがわかっています。また、英国政府は、税金を時間どおりに支払う人の割合を強調することで、税金の納税率を向上させることに成功しているそうです。

  • 健康診断で、血圧やコレステロール値が改善していることを医師から伝えてもらうことで、健康的な生活を続けるモチベーションを維持する。
  • スポーツチームで、チームメイトと競争することで、より高いパフォーマンスを目指す。

これ以外にも社会的インセンティブの例として

  • 褒められること
  • 評価されること
  • 感謝されること
  • 称賛されること
  • 尊敬されること
  • 社会的地位の向上
  • 経済的利益
  • 社会的認知
  • 社会貢献感

これらを満たすことで人々の行動を促すことが出来ます。

  1. 進み具合の見える化

人は、自分の進み具合が見えるときに、よりやる気になる傾向があります。そのため、自分の進み具合を常に見えるようにすることで、より効果的に行動を変えていくことができます。

研究によると、脳は肯定的な情報を効率的に処理することができますが、否定的な情報はあまり効率的に処理できないことがわかっています。そのため、人々の注意を引くためには、自分の進み具合を強調することが効果的であると考えられます。

  • 禁煙アプリで、禁煙を継続した日数を見える化することで、禁煙を継続するモチベーションを維持する。
  • 節約アプリで、これまでの節約額を見える化することで、節約を継続するモチベーションを維持する。
  • 勉強アプリで、学習した内容を見える化することで、勉強を継続するモチベーションを維持する。
  • 営業アプリで、アポイント数や成約率を見える化することで、営業活動を活性化する。
  • プロジェクト管理ツールで、タスクの進捗状況を見える化することで、プロジェクトを円滑に進める。
  • 店舗運営ツールで、売上や顧客数を見える化することで、売上アップを目指す。
  • 健康管理ツールで、血圧や血糖値を見える化することで、健康維持に役立てる。

  1. すぐにもらえる報酬

人は、将来もらえる報酬よりも、すぐにもらえる報酬のほうが価値があると考える傾向があります。そのため、すぐに報酬を得られることを強調することで、人は行動を起こしやすくなります。

病院の研究では、医療スタッフが手を洗うたびに数字が上がる掲示板を設置することで、手洗いの遵守率が向上しました。これは、手を洗うという行動に対して、すぐに報酬を得られることを強調したためと考えられます。

  • ダイエットアプリで、体重や体脂肪の減少を見える化することで、モチベーションを維持する。
  • 運動アプリで、1日ごとの運動量を見える化することで、目標を達成するモチベーションを維持する。
  • ポイントカードで、買い物をするたびにポイントを貯めて、そのポイントで商品やサービスと交換できる。
  • ゲームで、ステージをクリアするたびにボーナスやアイテムをもらえる。
  • ソーシャルメディアで、いいねやコメントをもらうと、承認欲求を満たすことができる。

お店のポイントシステムやゲーム、SNSなどはこの「すぐもらえる報酬」を利用して人々を動かしているわけです。

  1. コントロール感

人は、自分の環境をコントロールしていると感じているときに、より満足感を得る傾向があります。そのため、人々にコントロール感を与えることで、人はより良い行動を取ろうとするようになります。

例えば、節約アプリでこれまでの節約額が可視化されることで、人は節約を継続するモチベーションを維持することができます。

この4つの原則を活用することで、人々の行動を変えることができます。例えば、ダイエットをしたい人は、他の人のダイエットの成功事例を強調したり、すぐに体重や体脂肪が減少することを強調することで、モチベーションを維持することができます。また、スポーツの練習をしたい人は、他の選手と競争したり、練習後に自分の記録が向上することを強調することで、より高いパフォーマンスを目指すことができます。

人々の行動を変えるには、脅しよりも、社会的なインセンティブ、即時的な報酬、進捗状況のモニタリング、コントロール感などのポジティブな戦略を用いることが効果的であると考えられます。

まとめ

ここまで、Tali Sharot氏のTEDxCambridgeでの講演「How to motivate yourself to change your behavior」を参考に、人々の行動を変えるための「ポジティブな戦略」についてご紹介してきました。

脅しではなく、ポジティブな戦略を用いることで、より効果的に人々の行動を変えることができるということを、ご理解いただけたでしょうか。

節約、ダイエット、マーケティングやプロダクトデザインにおいて、ユーザーの行動を変えることは大きな課題です。しかし、ポジティブな戦略を活用することで、ユーザーの行動を変えて、より成功に近づくことができるでしょう。

本記事が、皆様の役立てば幸いです。

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