一生懸命働く人は本当に良い人なのか?
今回はアジム・F・シャリフ氏のTEDトーク「Does Working Hard Really Make You a Good Person? | Azim Shariff | TED」について解説をしたいと思います。日本語にすると「一生懸命働くと本当に良い人になれるのか?」です。
勤勉と道徳に関する研究のお話です。
まとめると下のようになります。
- 一生懸命働く人はいい人だと評価される。
- 一生懸命であること見せるために、無駄な競争が繰り広げられている
- もうそんな意味のないことはやめませんか。
では解説したいと思います。
勤勉な人は、一般的に「いい人」と評価されます。
その理由は、以下の3つが挙げられます。
- 責任感がある(様に見える。)
- 努力家である(様に見える。)
- 向上心がある(様に見える。)
この様に見えることによって、他人からは道徳的に良い人だと見られます。そのため、一生懸命働く人は、一般的に「いい人」と評価されます。
なんの価値もない社会的に意味もない仕事でも、「よく働く人は良い人だ」という単純なヒューリスティック(直感力)が働くのである。
これをアジム・F・シャリフ氏は「努力の道徳化(effort moralization)」と呼びました。タンザニアの狩猟採集民族でさえ、そのような傾向があったそうです。これは、人間にもともと備わったもの、DNAに刻まれていることなのかも知れません。
これは、アメリカでの研究なのですが、アメリカでは成果が評価されると思い込んでいましたが、日本人と同様に「努力信奉」があるのですね。
しかし、社会レベルで見ると、これは問題だとアジム・F・シャリフ氏は言います。
資本主義システムは非効率を無くすべきなのに、全く反対のシステムで私たちは働いていることになるからです。
私たちが今費やしている努力のどれほど多くが、自分たちの道徳的評判を高めるためだけに費やされていることだろう。
そして、他人に対して、「一生懸命さ」を見せつけ、評価をあげようとすると、無意味な競争が始まるわけです。この動画のなかでは、これを「arms races of workism(ワークイズムという軍拡競争)」と呼んでいます。他人よりいい人に見られたいがために、次のような軍拡競争が始まります。
- 残業時間や休日出勤を競う
- 仕事の量を競う
- 夜中の2時、3時にメールを送り、頑張っているアピール。
思い当たる人も多いのではないでしょうか?
このような競争は、決して生産性や成果の向上につながるものではありません。むしろ、労働者や学生の心身に大きな負担をかけ、ワークライフバランスを崩す原因となるのです。
ワークイズムという軍拡競争は、現代社会に根強く存在する問題です。この問題を解決するためには、私たち一人ひとりが、一生懸命働くことの意味や価値について、改めて考え直す必要があるでしょう。
ありきたりですが、ワークイズムという軍拡競争を避けるためには以下のようにするのがいいでしょう。
- 仕事以外のことにも目を向け、自分の人生を豊かにする
- 自分のペースで仕事をし、無理をしない
- 他人と比較せず、自分らしく働く
自分が、「他人や自分自身に一生懸命さを見せようとしているかも」とちょっとでも思ったら、仕事の手を止めてサボってみるのもいいのではないでしょうか?