言語習得の新パラダイム:基本から逆転の学習法へ。スティーブ・カウフマン氏の理論とは?

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こんにちは。今回は、YouTubeの動画「When Learning a Language DON’T Study the “Basics”」の内容を紹介したいと思います。

この動画では、日本語を含む20カ国語を操るポリグロット(多言語使用者)である言語学習者であるスティーブ・カウフマンさんが、言語を学ぶときに「基礎」を勉強しようとしない方がいいという理由を説明しています。

言語を学ぶときは、言語の構造や語彙は自然な順序で習得されるので、教科書や文法表などに頼らずに、たくさん聞いたり読んだりすることが大切だということです。では、この動画の内容をもう少し詳しく見ていきましょう。

基礎を勉強しようとするのは無駄

スティーブさんは、言語を学ぶときに基礎を勉強しようとするのは無駄だと言います。なぜなら、彼自身が何度も試してみたけれども、文法や単語などの基本的なことを意識的に覚えようとしても、うまくいかなかったからです。彼は、説明や表を見ても、それらが実際の言語使用にどう関係するのか分からないし、忘れてしまうと言います。また、基礎を勉強することに時間を費やすと、言語に対する興味やモチベーションが低下するとも言います。

スティーブさんの主張は、一理あると思います。言語を学ぶときには、単に知識を詰め込むだけでなく、実際に使ってみることが重要です。基礎的な知識がない状態でも、興味やモチベーションがあれば、なんとなくでも言語を使ってコミュニケーションをとることはできます。そして、実際に使ってみることで、その言語のルールや仕組みを理解し、徐々に基礎力を身につけていくことができます。

しかし、基礎をまったく勉強しないのも問題です。基礎的な知識がないと、言語の構造や使い方を理解することが難しくなり、誤った表現をしたり、誤解を生んだりする可能性があります。また、基礎的な知識がないと、応用的な学習や実践的なコミュニケーションが難しくなります。

したがって、言語学習においては、基礎と実践のバランスが重要です。最初は基礎をある程度勉強して、基本的な知識やルールを身につけた上で、実践を重ねていくことが効果的だと思います。

言語習得の自然な順序

では、基礎を勉強しないとしたら、どうやって言語を学ぶのでしょうか。スティーブさんは、言語学者のスティーブン・クラッシェンの理論を紹介します。クラッシェンは、言語習得には自然な順序があるという考えを提唱しました。つまり、言語の構造や語彙は、教師や教材が決めた順番ではなく、学習者にとって自然な順番で身につくということです。この自然な順序は、学習者の母語や学習言語によって異なるかもしれませんが、一定の傾向があると言われています。例えば、英語を学ぶ人は、現在進行形(I am going)よりも一般現在形(I go)の方が早く使えるようになるということです。このように、言語習得の自然な順序は、学習者の内在的なプロセスによって決まるので、外的な指導や指示にはあまり影響されないというのが、スティーブさんとクラッシェンの見解です。

自然な順序仮説によると、言語の構造や語彙は、学習者の内在的なプロセスによって習得されます。このプロセスは、意識的な学習よりも、無意識的な学習によって支配されます。例えば、赤ちゃんは、言葉を意識的に学ぶのではなく、周囲の大人の言葉を聞いて、自然に言葉を習得していきます

自然な順序仮説は、言語学習の指導にも応用されています。例えば、教師は、学習者の自然な順序に沿って、教材や学習方法を設計するように心がけます。また、学習者自身も、自分の自然な順序を理解し、それに沿って学習を進めることが大切です。

自然な順序仮説は、言語学習に限らず、他の学習にも応用できる考え方です。例えば、スポーツの技術習得や楽器の演奏など、何らかの技能を身につける場合にも、自然な順序に沿って学習することが効果的であると考えられます。

以下に、自然な順序仮説の例え話を挙げます。

  • 赤ちゃんは、歩く前に、座ったり、ハイハイしたり、這ったりします。これらの動作は、歩くための準備段階であり、赤ちゃんは自然な順序に沿って、これらの動作を習得していきます。
  • 子供は、まず、単語や簡単な文から、言語を習得していきます。そして、徐々に、複雑な文や表現を身につけていきます。この過程も、自然な順序に沿ったものであると考えられます。

このように、自然な順序仮説は、言語学習や他の学習において、重要な考え方であると言えます。

聞くことと読むことが重要

では、言語習得の自然な順序に沿って言語を学ぶには、どうすればいいのでしょうか。スティーブさんは、聞くことと読むことが重要だと言います。なぜなら、聞くことと読むことによって、言語の構造や語彙を多くの文脈で見たり聞いたりすることができるからです。スティーブさんは、語彙も自然に習得されると言います。よく出てくる単語は、自然に覚えることができるし、出てこない単語は、覚える必要がないと言います。また、聞くことと読むことによって、言語に対する理解力や感覚が養われると言います。スティーブさんは、言語を学ぶことは、音楽を聴くことや絵を見ることに似ていると言います。音楽や絵には、基礎を勉強する必要はなく、ただ楽しんで感じるだけでいいと言います。言語も同じように、楽しんで感じることが大切だと言います。

聞くことと読むことが重要な理由は、それらが我々に言語の「生の形」を提供するからです。これは新しい言語を学ぶ際に私たちが対面する経験や感覚を模倣することを可能にします。一方でトラディショナルな学習方法の一部は、学習者がページ上の単語や文法規則を覚えることに焦点を当てすぎる傾向があり、その結果、言語の生の感覚、それがどのように感じられどのように使用されるかということから学習者を遠ざけてしまう可能性があります。

スティーブさんが言語学習と音楽を連想させるという考え方は、ここで特に興味深い見方です。言語と音楽はユニバーサルで、直感的なものです。どちらも形式や規則性を持ちつつも、それらの細部は文化や個々の解釈によります。土台となる規則や構造を学んだ上で、感性や直感を通じて音楽や言語を理解し楽しむことが重要で、この点が彼が提唱する「ただ楽しんで感じることが大切だ」という考え方の根底にあると思います。

この原則は他の分野にも応用可能です。例えば、スポーツのトレーニングでも、技術的な詳細に重きを置くことが良いとする伝統的なアプローチを取るよりも、全体的な感覚やリズムをつかむことに焦点を当てるアプローチを試すことを提案するコーチもいます。この方法は、スポーツ全体を直感的かつ楽しく体験できるという利点があります。

いかなる学習も、その学習が「面白い」と感じられるときに最も効果的です。楽しさは好奇心を駆り立て、人々が新たな経験に自己を投じ、新しい知識を持続的に探し求める働きをします。したがって、”楽しむこと”は単に心地よいだけでなく、学習の本質的な要素でもあると言えます。

まとめ

今回は、YouTubeの動画「When Learning a Language DON’T Study the “Basics”」の内容を紹介しました。この動画は、言語学習に対する新しい視点を提供してくれると思います。もし興味があれば、ぜひ動画を見てみてください。それでは、また次回お会いしましょう。

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