サイバーコンドリア(Cyberchondria) とは?- ネット検索が引き起こす健康不安

現代の生活では、何か気になる症状があると、医者に行く前にまずインターネットで調べるのが当たり前になっています。
しかし、その検索行動が実際に不安を助長し、健康に悪影響を与えることがあるという事実をご存じでしょうか?
「サイバーコンドリア(Cyberchondria)」という新しい言葉がその現象を説明してくれます。
このブログでは、オンラインの健康情報検索がどのように心身に影響を与えるかについて考え、具体的な数字や研究を交えながら詳しく説明していきます。
サイバーコンドリアとは何か
まず、サイバーコンドリア(Cyberchondria)とは、インターネットで健康情報を検索することで、軽い症状から深刻な病気へとエスカレートして不安を感じることを指します。
たとえば、頭痛がするので調べたところ、最終的には脳腫瘍の情報にたどり着いてしまい、過度な心配をしてしまう――こうした経験は多くの人に共通するものです。
研究によると、実にインターネット検索の1%が健康に関するものであることが明らかになっています。
この数字を見れば、多くの人が体調に対して不安を感じ、症状を検索していることがわかります。
インターネット検索が引き起こす不安のメカニズム
では、なぜ私たちはこうした最悪のシナリオに飛びついてしまうのでしょうか?
これは、人間が不安を解消するために、最悪のケースを先に考える傾向があるからです。
医師に「頭痛がします」と言った時、医師が「それは単なる緊張かもしれませんが、脳腫瘍の可能性もあります」と言ったとしましょう。
この場合、多くの人は「脳腫瘍の方が心配だ」と感じ、そちらに意識を集中してしまうのです。
オンライン検索でも同様の現象が起こります。
頻繁にクリックされる内容が検索上位に表示されるため、深刻な病気の情報が目に付きやすくなり、不安をさらに煽る結果になるのです。
健康情報検索のリスク
車の故障をネットで調べた場合、検索行為そのものが車にダメージを与えることはありません。
しかし、身体の症状に関しては、検索することで心理的要因が体に影響を及ぼすことがあります。
これを「心身症的要因(psychosomatic factors)」と呼びます。たとえば、腕の痛みを調べると「胸に放散する痛みはないか?」「指先にしびれはあるか?」という質問が出てきます。
すると、自分では感じていなかった症状までが気になり始め、最終的に「心臓発作かもしれない」と思い込み、実際に医師の診察を受けることになります。
サイバーコンドリアの悪循環
さらに、問題はそれだけに留まりません。
医師の診察を受けると、あなたが提示する症状に基づいて、より詳細な検査が行われます。
しかし、この検査も決してリスクがないわけではありません。
ある研究によれば、アメリカにおける医原性死亡(iatrogenic death)――これは医療ミスや薬の副作用による死亡のことですが――が死因の第3位を占めていると報告されています。
これらの不必要な検査や治療は、検索行動によって引き起こされた不安の結果かもしれないのです。
サイバーコンドリアの社会的影響
サイバーコンドリアは個人の問題に留まらず、社会全体にも影響を及ぼします。
特に、他人の症状をインターネットで検索する「代理サイバーコンドリア(Cyberchondria by Proxy)」という現象も指摘されています。
家族や友人の健康を心配するあまり、オンラインで過剰に調べてしまい、その結果として不必要な心配を抱えるケースが増えています。
これは、医師と患者の関係にも影響を与え、医師が過剰な診断や治療を行う原因となることもあります。
サイバーコンドリアへの対策
では、どうすればこのサイバーコンドリアを防ぐことができるのでしょうか?
まず第一に、信頼性のある情報源を選ぶことが重要です。
医療に関する情報を得る場合は、公式な医療機関や信頼できる医療サイトを利用することが推奨されます。
また、自分自身で症状を診断するのではなく、医師に相談する習慣をつけることも大切です。
まとめ
サイバーコンドリアは、インターネット時代における新たな健康リスクです。
オンラインで健康情報を検索すること自体は有用な手段ですが、その結果として不安を煽り、場合によっては身体にも悪影響を与える可能性があります。
自分自身や他人の健康を守るためにも、インターネット検索に頼りすぎず、適切な医療機関での診察を受けることが大切です。