マンキーピングとは? – 女性が男性の孤独を支える「見えない感情労働」

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パートナーの友人の誕生日プレゼントを、代わりに選んで用意したことはありませんか?

夫や恋人の愚痴を、毎晩のように一人で聞き続けていませんか?

彼の友人関係が薄いぶん、その穴を自分が埋めているような気がする——。

その感覚には、いま名前がついています。

マンキーピング(mankeeping)」とは、社会的なつながりが乏しくなった男性の感情的・社会的なニーズを、女性が一方的に引き受けてしまう見えない労働のことです。

2024年にスタンフォード大学の研究者が提唱したばかりの新しい概念で、この記事では意味・背景・具体例・向き合い方までを整理して解説します。

マンキーピングとは?

マンキーピングとは、男性の縮小した交友関係を補うために、女性が不釣り合いなほど多くの感情労働を担う状態を指す言葉です。

2024年、スタンフォード大学ジェンダー研究所のアンジェリカ・フェラーラ氏とディラン・ヴェルガラ氏が学術誌『Psychology of Men & Masculinities』に発表した論文で提唱されました。

ポイントは「一方的(unreciprocated)」であることです。

女性が男性を支える一方で、同じだけのケアが返ってこない——この非対称性がマンキーピングの核心です。

恋人や夫婦だけでなく、母と息子、姉妹と兄弟、女性の同僚と男性の同僚といった関係でも起こります。

なぜ今この言葉が生まれたのか——「男性の友情不況」

マンキーピングの背景にあるのが、「友情不況(friendship recession)」と呼ばれる現象です。

アメリカの調査では、男性の交友関係がこの30年で急速にやせ細っていることがわかっています。

  • 「親しい友人が一人もいない」男性は、1990年の3%から2021年には15%へと5倍に増加
  • 「親しい友人が6人以上いる」男性は、55%から27%へとほぼ半減
  • 独身でパートナーもいない男性の5人に1人が、親しい友人ゼロ
  • 友人から毎週のように感情的なサポートを受ける人は、女性41%に対し男性は21%にとどまる

男性の多くは、悩みを打ち明けたり弱音を吐いたりする相手を、恋人や配偶者ただ一人に集中させがちです。

友人ネットワークが担うはずだった感情的な受け皿が、まるごとパートナーの女性一人にのしかかる。

これが構造的な男女の不平等の一部だ、というのが研究者の主張です。

マンキーピングの具体例

マンキーピングは、はっきりした「介護」や「相談」の形をとるとは限りません。

むしろ、日常に溶け込んだ小さなタスクの積み重ねとして現れます。

  • 夫の友人との食事会や集まりを、妻が企画・調整する
  • 恋人の友人へのお祝いやプレゼントを、彼女が代わりに手配する
  • 兄や弟の悩みごとの、唯一の相談相手になっている
  • パートナーの仕事のストレスを毎晩聞くが、自分の話はほとんど聞いてもらえない
  • 「友達と会ったら?」と促し、その段取りまで気づかってしまう

一つひとつは些細でも、合計すると相当な時間と精神的エネルギーを消費します。

しかも「愛情」や「気配り」とみなされやすいため、労働として認識されにくいのが特徴です。

「キンキーピング」との関係——言葉の由来

マンキーピングは、社会学で古くから知られる「キンキーピング(kin-keeping)」という言葉をもじって作られました。

キンキーピングとは、親族のつながりを維持するための労働のことです。

年賀状の準備、親戚への連絡、記念日の管理、家族行事の段取り——こうした仕事は、伝統的に女性が担ってきました。

マンキーピングは、その対象が「親族全体」から「特定の男性一人」に狭まったバージョンだといえます。

家事や育児の「見えない負担」が議論されてきたのと同じ構図が、感情のケアの領域にも当てはまる、という指摘です。

マンキーピングにどう向き合うか

この概念は「男性を責めるための言葉」ではありません。

提唱した研究者自身、個人の努力不足ではなく社会構造の問題として捉えるべきだと強調しています。

男性側にできること

  • 感情的な支えを、パートナー一人に集中させていないか点検する
  • 旧友への連絡や、趣味のコミュニティへの参加を、自分から動いて増やす
  • 必要なときはカウンセリングなど専門的な受け皿も使う

女性側にできること

  • 「これは自分がやるべきことか?」と一度立ち止まる
  • 相手の交友関係の段取りを、先回りして引き受けない
  • 自分が受け取っているサポートと、与えているサポートの量を言葉にして共有する

大切なのは、ケアをやめることではなく、それが一方通行になっていないかを見直すことです。

孤独そのものは悪ではありませんが(関連記事:孤独は悪いことではない)、支え合いが偏ったままでは、どちらかがすり減っていきます。

まとめ

マンキーピングとは、社会的つながりが細くなった男性を、女性が一方的に感情面で支えてしまう見えない労働のことです。

背景には、男性の「友情不況」という統計的な現実があります。

そして「キンキーピング」という家族維持労働の議論と、同じ根を持っています。

この言葉を知ることは、パートナーシップの中の「当たり前」を一度疑ってみるきっかけになります。

あなたの関係の中で、感情のケアはちゃんと双方向になっているでしょうか?

参考文献

  • Ferrara, A., & Vergara, D. (2024). Theorizing Mankeeping: The Male Friendship Recession and Women’s Associated Labor as a Structural Component of Gender Inequality. Psychology of Men & Masculinities. スタンフォード大学ジェンダー研究所(Clayman Institute for Gender Research)
  • Survey Center on American Life「American Men Suffer a Friendship Recession」(2021年 American Perspectives Survey)
  • Forbes「Mankeeping: How Shrinking Male Social Networks May Burden Women」(2024年10月)

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