[超加工食品] 食品中の化学物質 – 知らずに摂取している「隠れた危険」とは?[UPF]

はじめに
朝のコーヒーと一緒にクッキーを楽しみ、昼食にサンドイッチを食べ、夕食には出来合いの惣菜を食べる。
これが多くの人々の日常的な食生活ではないでしょうか。
しかし、この一見何気ない食事の中に、私たちの健康に影響を及ぼす可能性のある「隠れた危険」が潜んでいることをご存知でしょうか?
本記事では、食品中の化学物質、特に「超加工食品」(Ultra-Processed Foods、以下UPF)に焦点を当て、その prevalence(普及度)と健康への影響、さらには食品業界や政府の対応について詳しく見ていきます。
超加工食品 – 私たちの食卓に広がる「見えない脅威」
UPFとは何か?
超加工食品(UPF)とは、工業的に生産された食品添加物や化学物質を多く含み、高度に加工された食品を指します。
具体的には、インスタント食品、チップス、清涼飲料水、加工肉製品などが該当します。
驚くべき普及率
2021年の研究によると、アメリカとイギリスでは、消費されるカロリーの50%以上がUPFによるものだとされています。
他の先進国や中進国でも、20〜40%のカロリーがUPFから摂取されているという衝撃的な事実が明らかになっています。
健康への影響
近年の研究では、UPFの摂取が以下のような深刻な健康問題と関連していることが指摘されています:
- 糖尿病
- 肥満
- がん
特に注目すべきは、インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究者であるキアラ・チャン博士による研究結果です。
約20万人を10年間追跡調査した結果、UPFの摂取割合が10%増えるごとに、がんのリスクが高まることが判明しました。
食品加工の歴史 – 便利さと安全性の追求
加工食品の進化
食品加工の歴史は古く、約100万年前に人類が火を使って肉を調理したことに始まります。
その後、以下のような技術が発展してきました:
- パン焼き
- 発酵
- 塩蔵
- パスツール殺菌(19世紀の産業革命期)
これらの技術は、食品の保存性を高め、感染症のリスクを低減するという重要な役割を果たしてきました。
現代の食品加工
1950年代以降、食品加工の目的は単なる保存から、以下のような点に重点が置かれるようになりました:
- 利便性の向上
- 味の改善
- 色や食感の向上
キングス・カレッジ・ロンドンの遺伝疫学教授であるティム・スペクター氏は、現代の食品加工について次のように指摘しています:
「これらの化学物質、つまり食品会社の優秀な食品科学者たちが開発した食品は、脂肪、砂糖、塩の絶妙な配合により、人々にもっと食べたいと思わせ、過食を促すように設計されているのです。」
食品業界の現状 – 利益と健康のジレンマ
巨大な経済規模
イギリスでは食品・飲料産業は、最大の製造業セクターとなっています。
以下のような経済的インパクトがあります:
- GDPへの貢献:340億ドル
- 雇用者数:40万人以上
- 業界全体の規模:1,280億ドル
業界の主張
英国食品飲料連盟(FDF)は、食品加工には以下のようなメリットがあると主張しています:
- 原材料を食用可能な形に変換
- 賞味期限の延長
- 食感の改善
- 多様な選択肢の提供
健康への懸念
一方で、UPFの摂取増加に伴う健康リスクの上昇は無視できない問題となっています。
WHO(世界保健機関)によると、心臓病、がん、糖尿病などの非感染性疾患は、世界の全死亡の74%(年間4,100万人)を占めています。
これらの疾患の主な原因として、WHOは以下の4つの行動を挙げています:
- たばこの使用
- アルコールの有害な使用
- 身体活動不足
- 不健康な食生活
特にイギリスでは、4人に1人が肥満であり、これはヨーロッパで最も高い比率です。
経済的格差と食の選択
健康的な食品の高コスト
Food Foundationの調査によると、健康的な食品は不健康な食品の2倍の価格であることが分かっています。特に果物や野菜の価格が高いのが現状です。
Food Foundationの栄養士兼ビジネスマネージャーであるレベッカ・トビ氏は、この問題について次のように述べています:
「全ての人が食事に時間やエネルギーを費やせるわけではありません。複数のシフトで働き、食費が厳しく制限されている人もいます。政府や企業が人々の食環境を変えるために行動することが重要です。」
個人の選択の限界
トビ氏は、食の選択を個人の責任に帰することの限界も指摘しています:
「ここでの選択は、人々が買えるものによって厳しく制限されています。個人の選択の問題ではないのです。」
投資家の動き – 健康的な食品システムへの圧力
投資家連合の形成
最近では、投資家たちも食品システムの改善に向けて声を上げ始めています。
総額7兆ドルの資産を運用する投資家グループ「Investor Coalition for Food Policy」が結成されました。
透明性の要求
この連合のリーダーであるソフィー・ローレンス氏は、以下のような規制を求めています:
「食品セクターの企業に対し、健康と持続可能性に関する一連の指標を義務的に報告することを求めています。これにより、投資家としてこれらの企業が直面しているリスクを理解することができます。」
業界の対応
このような圧力を受け、食品業界も徐々に変化を見せ始めています:
- ネスレ(世界最大の食品会社):2022年に初めて製品の栄養価を公表
- ユニリーバ:製品の64%がWHOの栄養基準を満たしていると発表。2028年までに85%に引き上げる目標を設定
しかし、これらの取り組みは現在のところ自主的なものであり、企業が自己評価を行っているのが現状です。
健康的な食生活への提言
キングス・カレッジ・ロンドンのティム・スペクター教授は、健康的な食生活のために以下の5つのルールを提案しています:
- 週に30種類の植物性食品を摂取する
- 様々な色の食品を食べる(ポリフェノールの摂取)
- 発酵食品を定期的に摂取する
- 14時間の絶食時間を設ける(腸内細菌の休息のため)
- 超加工食品の摂取を大幅に減らす
「もし全ての人がこれを実践すれば、国全体がもっと健康になるでしょう」とスペクター教授は述べています。
まとめ – 健康的な食生活への道のり
食品中の化学物質、特に超加工食品(UPF)の問題は、私たちの健康に直結する重要な課題です。
その普及率の高さと健康リスクの深刻さを考えると、個人の努力だけでなく、以下のような多面的なアプローチが必要不可欠です:
- 消費者教育: UPFのリスクと健康的な食品選択について、より広範な啓発活動が求められます。
- 政府の規制: 食品業界に対する透明性の要求や、健康的な食品の価格を下げるための政策導入が検討されるべきです。
- 企業の責任: 食品メーカーは、より健康的で持続可能な製品開発に向けて、自主的な取り組みを加速させる必要があります。
- 投資家の役割: 健康的な食品システムの構築に向けて、投資家が企業に対してより強い圧力をかけることが期待されます。
- 研究の継続: UPFの長期的な影響についてさらなる研究を進め、科学的根拠に基づいた対策を講じることが重要です。
私たち一人一人が、日々の食事の選択に意識を向けると同時に、社会全体でこの問題に取り組むことで、より健康的で持続可能な食生活を実現することができるでしょう。
健康的な食事は、個人の幸福だけでなく、社会全体の健康と経済的繁栄にも貢献する重要な要素なのです。